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開発ストーリー

まるでトウモロコシのような、甘い香りをはなつ「かほる茶豆」。糖の含有量は一般枝豆の2.75倍。そのふくよかな旨味は、これまでの茶豆のイメージをくつがえすほどです。

 味のほかに「かほる茶豆」が、従来の常識を打ち破ったことがもうひとつありました。それは、旬である夏以外に収穫・出荷できるようになったこと。新鮮な茶豆が年中通じて収穫できるのは、実は世界初! 千葉大学園芸学部と山形大学農学部の協力により実現した茶豆の「養液栽培」により生まれた、高い技術の産物なのです。

 研究の中心となった千葉大学園芸学部の丸尾達(とおる)教授と、山形大学農学部の阿部利徳名誉教授に、その開発について振り返っていただきました。

冬でも収穫できる「茶豆」づくりのきっかけのひとつに、
明るい日本の農業の未来がありました

 千葉県松戸市に広大なキャンパスを持つ、千葉大学園芸学部。立ち並ぶプラスチックハウスのなかに、2人の男性の姿がありました。千葉大学園芸学部の丸尾教授と、山形大学農学部の阿部名誉教授。まるまるとしたさやをつけた「かほる茶豆」の前で談笑するおふたりの力なくしては、今回の開発の成功はありえませんでした。

 なぜ、アグリホープが大学の研究機関と連携して「かほる茶豆」という茶豆を開発しようと思ったのか。それは、日本の未来に大きく関係しています。

 生産者の高齢化、後継者不足、耕作放棄地増大など、現代の日本農業が抱える課題はあまりに多く、国外に目を向けても生産国不足、食料不足はいまでは一刻も早く軌道修正しなければならない世界規模の問題となっています。

 アグリホープでは、消費者には新鮮でおいしく、栄養価も高い作物を、生産者にとっては環境変化を受けにくく安定した作物を、と双方が幸せになれる農業のありかたを従来の枠組みにとらわれず挑戦を繰り返してきました。

 その挑戦のひとつが夏以外に安定して収穫できる「茶豆」だったのです。

「茶豆は枝豆の1種なんですが、とても栄養価が高い食物なんですよ」というのは、枝豆・茶豆を長年研究する阿部教授。ビタミンB1や食物繊維、アスパラギン、アラニン、GABAなどの遊離アミノ酸、葉酸、イソフラボンやプロアントシアニジンなどを豊富に含み、肝機能の向上や高血圧の改善など、その効果は「天然のサプリメント」といってもいいほどだとか。

 夏だけのおつまみのイメージが強いけれど、山形県ではまめご飯やサラダなど食事として日常的に根付いた食物だそうです。

試行錯誤の5年の「養液栽培」研究により安定した通年収穫を可能に

 この小さなひと粒に大きな潜在能力を感じ、茶豆の通年栽培の研究を始めたのが2011年。まずは、多数ある品種のうちどの品種を育てるか、阿部教授による成分分析から始まりました。ただの枝豆では、そう簡単には消費者はふりむいてくれません。茶豆へのイメージをがらりと変えるほどのインパクトが必要で、それには「やはり味で勝負するほかない」と、甘みと旨みが強いものを成分分析の結果、選んだといいます。

 品種が決まると、夏以外の収穫を実現するために千葉大学が得意とする「養液栽培」の研究へとバトンタッチ。

「養液栽培というのは、必要な栄養成分を含んだ培養液を与えて栽培する水耕栽培なんです。土に植えないので連作しても病気になりにくいというメリットがありますよね」(丸尾教授)

 研究の最終目標は、「安定して定期的に収穫ができるか」。そのためには、丸尾教授曰く「強い苗を作る必要がありました」。LED育苗室という、完全に密閉された人工光の育苗室で苗を育て、その後は、太陽光のハウスに移し、温度、湿度、養分など完全制御したうえで収穫を待つ。この方法により、いつでも最高品質の苗の供給が実現し、寒い冬場や暑い夏場でも安定した質と量の「かほる茶豆」の収穫が可能に。ちなみに、この技術は世界初。

「もっと早く終わると思ったんですけど、意外と難しかったなぁ(笑)」と丸尾教授は振り返ります。

いわきでいよいよ本格的に始まる
大きな可能性を秘めた、「かほる茶豆」栽培

 こうして生まれた「かほる茶豆」は大学での研究段階を終え、福島県いわき市に建てられた太陽光ハウスへと場を移し、今、立派なさやをつけ始めています。

 茶豆はどの地でも作れる訳ではなく、その成長には安定した日光が必要で、日本有数の日照時間の長さを誇るいわき市の天候が最適なのです。

 養液栽培のメリットは「環境制御型のプラスチックハウス」、「土を使わないこと」であり、培養液のベースとなる水は、地下水成分基準に合格した地下水をくみ上げて使用し、徹底的に安全への確認、配慮はクリアしています。

 いわきにとって、福島にとって、日本にとってこれからの農業と復興のこと。この「かほる茶豆」は、食卓と農業の未来を変えるような大きな可能性を背負っているのです。

  • 丸尾 達
    丸尾 達 TO-RU MARUO

    千葉大学園芸学部 教授
    農学博士
    蔬菜栄養生理・生態論、
    資源植物生態学

  • 阿部 利徳
    阿部 利徳 TOSHIYUKI ABE

    山形大学農学部 名誉教授
    生殖生物学・生殖医工学

  • 上妻 弘人
    上妻 弘人 HIROTO KAMITSUMA

    株式会社アグリホープ
    取締役生産部長
    かほる茶豆を完成させるため、
    教授とともに生 産・研究に励む。